Doll‥ ~愛を知るとき
非常階段の手前で、樹は、あたしを抱きしめた。
「愛波!もう苦しまなくていい!何も考えなくていいんだ!」
「やだぁ!離して!樹、離して!」
「愛波、落ち着いて‥。」
「やだよ‥。樹‥、もういいよ‥。ごめんなさい‥、ごめんなさい‥。」
「愛波‥。」
あたしを抱きしめた腕に、樹がギュッと力を込めた時
「ナメやがって!」
浩也の叫び声と共に、体に強い衝撃が走った。
まるで、スローモーションみたい。
ふわりと浮遊感が全身を取り巻いて、あたし達は、階段を落下していた。