Doll‥ ~愛を知るとき
退院の手続きを済ませ、アパートに向かう車の中で、緊張しながら樹に訊いた。
「あたし‥、一週間も意識不明だったの?」
「そうだよ。」
「看護師さんに聞いたの。ね‥、あの看護師さん、あたしのこと知ってるみたいだった。」
「ん?」
「あたしのこと“エナ”って呼んでたでしょ?」
その問いに、樹は答えてくれなかった。
「もう着くよ。」
そう言って、海沿いの道路を左折した。
退院後、一度だけ診察に行った。
経過を診る為だって。
その時には、看護師は『岬さん』って呼んでいた。
何故かは分からない。
樹と彼女の、どこに接点があったのか‥。
だけど、看護師が歌穂だったことを思い出した。