Doll‥ ~愛を知るとき

子ども達の世話をしながら、荷物を片付けた。

築年数の浅い3LDKのマンションは、樹とあたしの荷物、それに新たに購入した家具や家電を置いても十分に余裕があった。

樹と一緒に夕飯を作り、みんなでテーブルを囲んだ。

ベビーラックの愛優理は「あーあー」と ご機嫌に声を出している。

ふと、樹は小さく細長い包みを差し出した。

「はい、どうぞ。」

「え?ありがと、なに?」

わくわくしながら開けて、思わず笑みが零れた。

水色のお箸には【いつきくん】ピンク色のお箸は【えなちゃん】

そして、色違いのスプーンが二本。

【あーくん】【あゆちゃん】


「うわっ!あーくんてかいてる!」

にこにこ笑顔の愛翔は「パパ、ありがとー。」って言った。

愛翔の頭をクシャクシャ撫でて、樹は優しく頷いた。

二人に微笑みかけたあたしの目は、涙で潤んでいた。

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