お兄ちゃんができました。

*お兄ちゃんと我が家のペット

*



余計なことを口走らないよう、お口にチャックを閉めた私はお母さんにお願いと言う名の脅しをかけられ、ただいま志月くんの片づけを手伝い中。


恐れ多いことに私は今、志月くんと彼の部屋で二人きり。

……これは何かのイジメだろうか。

段ボールから小難しそうな分厚い本を取りだしながら、ちらりと同じく段ボールからものを取りだす志月くんを見る。

微笑を浮かべた志月くんもカッコいいけど、真剣な顔の志月くんもまた……。

なんておじさんみたいな考えをして凝視していると、視線に気づいた志月くんがふっと顔をあげる。

まさか顔をあげるなんて思ってなかった私の心臓は跳ねあがった。

じわりと、額に嫌な汗が浮かぶのが分かる。

ど、どうしよう……。か、顔がそらせない……。

綺麗な茶色の瞳に見つめられ、私の心臓はバクバクと不自然に刻む。

やっばい。吐きそう。心臓吐きそう。

気道をふさぐ何かを飲みこもうとつばを飲むけれど、それは消えず。

多少の息苦しさを感じていると、不意に志月くんは立ち上がるとこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。

驚いて声も出せない私の前に座って目線を合わせると、スッと手を伸ばして私の頬に触れた。




「――ッし、志月くん!?」



ひやりとした手の感触に、私の心臓は壊れる寸前だ。

もう緊張してんのかなんなのか分からない。

混乱する私をよそに、志月くんは不思議そうに小首をかしげると心配そうに眉根を寄せる。



「ハル。大丈夫? 顔真っ赤だけど……風邪?」




風邪じゃなくてあなたのせいです。

100%。

なんて、言えるはずも無く……。




「ううん。風邪じゃないのっ! ちょっとこの部屋暑いなぁって……」




アホか私はあああああああああ!!!!

咄嗟に飛び出した言葉に私は頭を抱える。

暑いって? 暑いってか?

ぜんっぜん暑かねぇよ。春にしてみれば寒い方だよ。












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