年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)


 由也くんは何も言わなかった。私の部屋には上がりたくないみたいだった。遠慮されて私は寂しく感じた、私とは他人だと言われたみたいで。直に熱燗やお通しが届いて接客係の女性に酒を注がれる。由也くんは慣れた様子で話をして、ここの常連客なのは私にも分かった。由也くんと乾杯する。乾杯するって何に乾杯なのかも分からず猪口を上げる。接客係が下がり、由也くんは猪口を置いて息を吐いた。


「先日はごめんなさい……別れたのに、僕とんでもないことを」
「ううん。私だって」
「でも理性もなく襲うみたいに」


 謝る由也くんは私を抱いたのを後悔してるみたいだった。


「由也くん、単刀直入に言うね。私、由也くんのそばにいたい」
「綾香さん?」
「突然別れるって言われて縋ってるんじゃないよ。あの橋の上で落ち込んだ由也くん見てたら気になって。元気取り戻したかなあとかうまくいったかなあとか考えちゃって」
「……」
「私、籍ならいらないよ。今までみたいに一緒にいられたらそれでいいし」
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