年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
『まあさ、別れても本当に別れるまで3ヶ月掛かるって言うしな。ゆっくり忘れろよ』


 鎌谷の言葉に救われた私はほぼ毎週のようにあの橋に来ていた。無理に忘れようとしたって出来ない。なら3ヶ月の間は由也くんとの思い出に浸ろうって。初めてキスしたときは勿論、説教じみた営業レクチャーをしたこととか、由也くんが大きな契約を取ったときに打ち上げした居酒屋で八海山を一気飲みして由也くんに怒られたこととか、公園で芝生に寝転んでお昼寝したこととか。


『ずっと綾香さんといられたら幸せですね』
『うん。私もね同じこと考えてた』
『一緒にいるだけで僕は嬉しいです』


 あのとき由也くんは少し寂しそうな顔をしてた。今なら私との将来を諦めていたんだと分かる。私はそんな由也くんの気持ちにも気付かず、小さなプロポーズだと思い込んでホクホクしていた。


「一緒にいるだけで幸せ、かあ……」


 今でも変わらないだろうか、由也くんの気持ち。結婚出来なくても私がそばにいたら幸せだって言うだろうか。

 橋の上は相変わらずバカップルでいっぱい。中には一人でいる私を嘲笑う輩もいる。それでも私は通い続けた。



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