年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 アパートに帰って入院の用意をする。着替え、ナプキン、手術入院代、保険証、暇潰しの本、由也くんの写真。


「……」


 新婚旅行に行ったときのだった。あの高原の教会で変わらぬ愛を誓った。勿論由也くんへの気持ちは変わってはいない。大好きだし、若くして副社長という重責に着き一生懸命に仕事してる辺りは尊敬もする。穏やかで滅多に怒らないところも凄いと思う。
 でもこれからの私は由也くんを見る度に中絶したことを思い出す。そして中絶した日は誕生日のように毎年やって来て、その度に思い出す、ああこの日に私は赤ちゃんを殺したんだって。避妊だってこれからはもっときちんとしなくちゃいけない。ピルやリング、基礎体温、妊娠しないように自分の体をメンテナンスしていく。大好きな人がいる、産んでもいいって言ってくれてもいる、なのに妊娠をしちゃいけないなんて拷問だと思った。


「由也くんごめんね、私年上の癖に我が儘ばかりだね……」


 別れても気持ちは変わらない。教会で誓ったのは嘘偽りはない。これからも由也くんを愛し続ける。ただ近くにいないだけで……。

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