年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)

 しばらくしてノックする音で目が覚める。産婦人科のスタッフが簡易ベッドを置きに来た。出産で付き添う父親も増えてそういうサービスもしているらしい。夕飯や朝食も二人分用意してくれる。私はトイレに行こうとベッドからむっくり起き上がった。由也くんは気遣って私の背に手を当ててくれる。寝過ぎて覚束ない足取りでいると一緒に個室を出てくれた。廊下の向こうの化粧室までゆっくりと歩く。廊下で由也くんに待っててもらい用を済ませた。手を洗い再び廊下に出ると、他の患者さんとすれ違った。小さな保育器をコロコロと押してる。ああ患者じゃなくて産婦さんだ、ああやって部屋まで連れてくんだと眺める。小さな保育器の中には小さい赤ん坊がいた。顔が赤くて皺くちゃで、毛布からはみ出た手もちっちゃかった。

 女の子なのかその柔らかそうな毛布はピンク色だった。


「ちっちゃい……」


 眠っているのかちっとも動かない。気持ちいいんだろうか、柔らかい毛布に包まれてぬくぬくしてるんだろう。
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