年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)

「おい、ボケ!」


 私は振り返った。鎌谷は背を向けたままだった。


「たまには……付き合えよ」
「……」


 私は返事もせずに給湯室を出た。これでいい、もう鎌谷に甘えるのはよそう。大体、由也くんと偽の結婚をするって決めた時点で私は“ひとり”だったんだから。親も兄弟も友達も皆、私を祝福する筈がない。不倫、愛人、道に外れた関係なんて理解してもらおうなんて方が勝手だ。虫が良すぎる。何かを捨てて何かを選ぶ。それだけだ。

 もっと強くなろう、強くなりたい。由也くんに婚約者が出来ても、正妻が出来ても、子供が出来ても、泣かずに真っ直ぐ前だけを見れる自分になりたい。ひとりぼっちで生きてく覚悟が欲しい……。
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