年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)


 由也くんは何も言わなかった。空港での待ち時間、二人黙ってベンチに座っている。あと数時間、飛行機に乗って成田に着けばそこでお別れだ。もう、ありがとう、も、幸せに、も言う気力も無かった。

 と、そこで由也くんの携帯が鳴った。旅行中何回も副社長の指示を仰ぐためか携帯は鳴ってはいた。だから今回も会社からの電話だと思った。


「明けましておめでとうございます……今空港ですが、ええ、大丈夫です……」


 由也くんはベンチから立ち上がり、会話を続ける。いつもなら手帳を出して逐一確認したりメモしたりするけど、今はそのまま話し続ける。しかも時折私をチラチラと見て。聞き耳を立てるつもりはないけど、由也くんの声を耳に留めておきたくて耳をダンボにしていた。
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