あなたから、kiss
私達が戻ると同時に、木製のマグカップを持った店長さんが…奥からやって来た。
「すみません、すっかりお待たせしちゃって…。これ、どうぞ。」
目の前に置かれた、マグカップから上がる、甘くスパイシーな香りのする湯気に…。
雨宮くんと二人、顔を見合わせる。
「……これは…?」
「グロギって言う、北欧では定番のホットドリンクです。」
「……赤ワイン…?」
「ええ。花さん、お好きだと聞いていたので… 。赤ワインに、シナモンやカルダモン、クローブなどスパイスを加えたものです。今日は外寒かったでしょう?どうぞ温まっていって下さい。」
「ありがとうございます!すごいですねー…、ご家庭で作っちゃうなんて。」
こくん、と一口飲むと。
喉元から、芳醇な香りが…ふわりと広がっていった。
……美味しい。
アーモンドスライスが、オシャレさを…演出している。
「実は…、今、二階を改装中で。12月からカフェをオープンする予定なんです。」
「ええっ…!」
「間もなくダイレクトメールを送る予定でしたけど…、超お得意様の花さんには、一足早いご報告と宣伝をさせていただきます。このグロギを、お店の看板メニューにできたらと…。」
茶目っ気たっぷりに…、店長さんは微笑んだ。
「……あの、凄く、すごーく美味しいです!毎日これ飲みに通いたいくらい!」
「………。ありがとうございます。」
「あの…、そのこと、記事に書かせていただいてもいいですか?」
「ええ、勿論こちらとしては嬉しいばかりですけど…」
「サービスしていただいたお礼です、この素晴らしい味を、私と雨宮が責任をもって…世間にお知らせしますので。」
雨宮くんは、自分の名前が出たことに驚いたのか…、ゴホゴホと咳き込んでしまった。
「ありがとうございます!楽しみにしてますね。」