あなたから、kiss
席を立った二人がなかなか戻って来なくて…。
暇をもて余す。
店を覗きに行くと、雨宮くんは真剣な面持ちで…
並ぶインテリア雑貨に、そっと…手を触れていた。
「雨宮くん、こういうお店に…興味あったんだね。なかなか戻ってこないからどうしたのかって思った。」
彼はちょっとだけ驚いた顔して。けれど、いつもの穏やかな口調で…話し出す。
「いえ…、正直、雑貨屋とかは苦手で…。女性客が大半だし、余り小物とかは置かない主義なので。でも……、来て良かった。ここは…違います。落ち着くって言うか…、独特の温かみを感じます。」
「そうだね…。わかる!」
「………。多分ですけど…、俺ら、気が合いますね。」
「えっ…。」
「聞き流していいですよ、俺が勝手にそう思うだけなんで。どうせ否定しようとするでしょ、アナタは。」
「…………。……勝手に決めつけないでよ。」
「すみません。思ってることは言っちゃうタチなんです。」
「……………。」
「例えば…、この木製のスープ皿。昔読んで貰った、3匹の熊が出てくる絵本の中で…こういうのが出て来ました。女の子が熊達のスープを飲んでしまうんですけど…、描かれた絵を見るだけで、そのスープはあったかくて旨いんだろうなって…思ってて。あれもきっと…欧州のどこかの絵本なんでしょうね。ロッキングチェアーとか、このお店にあるものが…懐かしい気にさせます。」
「…………。」
「こういう家に、住んでみたいって…、花さんもそう思いません?」
「……思う…。」
「はは、ちょっと素直だし。」
「……うるさい。いーから、戻るよ!」
年下の癖に…、すっかり見透かされている感。
だから、彼には近づきたくなかった。
本当は、虚勢張ってるだけで…仕事に明け暮れることで、寂しさをまぎらわせているだなんて…誰にも知られたくなかった。
恐らくアナタは、その勘の良さで…それを見抜いてしまうんじゃないかと…
危惧してた。
冷蔵庫の中には…、ストックしているビールが数本。
恐らく腐ってしまっているだろう野菜たち。
間違っても温かいスープがまっていることなんて…ない。
「泣きそうな顔。」
「………!」
「ここの記事、花さんが書いたでしょう?」
「……な、なんで……」
「ここに癒しを求めて来ている人の情感が…伝わってきました。」
「…………。」
「いいページにしてくださいね。」