歪んだ愛しさ故に
 
その日の仕事もひと段落つき、日報を提出。

今日は久しぶりに8時退社だ。
最近は、新企画に追われて遅い日が多かったけど、ひとまず今日は直近はないことから帰ることにした。



「待って!」

「え?」


一言挨拶をして、エレベーターに乗り込むと、中村さんが一緒に乗り込んできた。


「間に合ったぁ……」
「お疲れ様です……」
「お疲れー。豊田さんも今日はもう帰るんだね」
「はい」


中村さんといえば、少し前に柳さんと一緒になってあたしの陰口を言っていた人だ。

絶対に彼女にしたくないだとか……。
まあ、あたしも中村さんは嫌だけど。


「このあと直帰?」
「え?あ、はい……」
「じゃあさ、ちょっと飲みに行かない?」


まさかの誘い……。

いや、全然まさかではない。


あたしが今の姿になってから、いっきに態度を変えてくる人は決して少なくなかったから。
 
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