歪んだ愛しさ故に
8章 独占欲
 
「じゃあ、こちらをお願いします」
「あ、ああ」


まとめた資料を上司に提出。

あたしがこの姿になってから1週間が過ぎたというのに、いまだに慣れてないらしい。

人が話をしているというのに
ちらちらと送られる視線。

そんなに地味女が、まともな格好になることが珍しいのか……。



「はぁ……」

「みんな、豊田さんがあまりにも綺麗になったから見惚れてんのよ」

「え?玲子さん……」


席につくと、隣に座っていた玲子さんがそんな言葉を残した。


玲子さんは、あたしが昔のスタイルだったときから、気さくに話しかけてくれていた唯一の先輩。
だから今回、あたしがこんなふうに変わっても、驚いたものの嫌味の言葉も一つ言わなかった。


「あたしだって、今の豊田さんに見つめられたら、ドキドキしちゃうもん」
「やめてくださいよ」
「だってねぇ……。
 あ、今度一緒に飲みに行こうよ。
 ……って、お酒飲めないんだっけ?ご飯食べるだけでもいいし」
「ぜひ!……そして実は、お酒飲めますよ」
「だと思った。
 金曜とかどう?」
「はい」


あたしが、お酒を飲めていたということをカミングアウトしても、嫌な顔せず納得顔。

玲子さん相手なら、あたしも楽しくお酒が飲めそうと思い、週末飲みに行く約束をして業務に戻った。
 
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