リップフレーバー
「こんな夜中にさぁ、何か食べるなんて信じらんない。ちゃんと早い時間にご飯取らなきゃ」
「だって、急な会議でさ」
「で、何食べんの?」
「サクサクっと、お茶漬け」
ピザとるなんて言ったら張り倒してやろうかと思った、と言いながら彼は立ち上がった。
「じゃ、俺が用意しておくから、美知佳さんはシャワーして着替えておいで」
「え、いいよ。疲れてるのに」
海外から帰ってきたばかりの人に、ご飯なんて頼めないでしょ。
「俺が良いって言ってるんだから、い・い・の」
軽く伸びをしながら陽希の足はキッチンへ向かう。
その優雅な後ろ姿に見惚れながら私も、よいしょ、と立ち上がった。