お姫様と若頭様。【完】






長い長い廊下。


私が倒れた日、私はずっと眠り続けて
今日はあの日から1日経ったみたい。


それに外は暗いから今は夜。



…私の大好きな……ヨル。



輝く星も、

満ち欠けする月も、

紫色の雲も、

しっとりと澄んだ空気も、

漆黒の大きな空も、


全て…全て貴方のもの。



夜は怖くも美しいと教えてくれた、
貴方のもの。



私の瞳に美しいものが映ることは
もう一生ないと思っていた。

何もかも諦めたあの日から、
私の世界はくすんでいたから。



長い廊下を歩き、
階段へと差し掛かった。

1段1段、忘れないように進んで行く。

1段1段、貴方に声を掛けながら。



1段…今日は空が綺麗だね。

2段…今日は少し涼しいね。

3段…あの日声を掛けてくれて、
ありがとう。



丁寧に、丁寧に登って行く。



貴方に近づけると思ったら心のどこかでワクワクしている自分に気づいた。




貴方への愛が消えていなくて…
本当によかった。





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