お姫様と若頭様。【完】



ーキィィー…


少し錆びた重たい扉を開く。

立ち入り禁止の文字を
見て見ぬ振りをして。



ゆっくりと歩いて行くと今がまだ冬だからか寒さが肌に突き刺さる。

さっきストールだけしか巻いて来なかったからか、この先への恐怖からか。


きっとそれは前者であるだろう。



この先への恐怖なんて正直全くなくて、

どちらかといえばここにいることの方が
私にとって恐怖だ。


…もう誰にも、会いたくない。




今まで支えてくれた凱瑠やゆーちゃん、
聡さん、夕梛、アッ君、ほのちゃん、
ジュンさん、マー君、アラレちゃん。


そして紅蓮の皆。



特に凱瑠や聡さん、夕梛にはたくさん
心配を掛けたし励ましてもらった。



皆にたくさん助けてもらった。



でもそれを皆に返すことが出来ない。


私なんて何もない人間だから…、
皆になにもしてあげられない。


励ますより励まされてしまうし、
助けるより助けられてしまう。





本当は皆の優しさが痛くて辛かった。




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