お姫様と若頭様。【完】


私はパパの言い付けもあってか、
族と呼ばれる人たちとは関わらないようにしていた。


なぜパパが関わりを避けろと言ったのか
わからなかったけど、
私はずっと従って来た。





だから、私は彼の名を知らなかった。






学校で彼を初めて見かけた時、
なぜこんなにも綺麗で人目を引く人なのに私が知らなかったか不思議だった。


でも友達は皆彼のことを知っていた。


それがさも当たり前かのように。





彼が暴走族のトップであることを知り、
彼とは関わってはならないと知った。



だから私はずっと遠くから彼を見つめているだけの、ファンのようだった。







そんな私の日常が大きく変わったのは、
彼を知ってから2月(つき)程後だった。



私はその日、
一つ上の先輩に呼び出されていた。


内容はなんとも幼稚で、
そして陰湿なものだった。


"色目を使って人の彼氏を盗るな"

"身体使って
男子に気に入られてるんでしょ"

"男子が寄ってくるからって
調子に乗り過ぎ"



なんだか少し日常のようになって来た
男子絡みの"お呼びだし"



今日はそんなことに放課後ずっと付き合わされて暗くなってしまった。


前がかろうじて見える程の暗さ。


今日は曇っているせいか星や月もなく、
外が異様に暗い。



…もう……怖いったらない。



足が竦んでしまいそうな程、
私はこの暗がりに怯えていた。






ーーそんな時だった。




「きゃっ!!」






< 334 / 371 >

この作品をシェア

pagetop