愛すべきフレーバー
胸の鼓動が大きくなって、今にも弾けそうになる。このまま蕩けてしまいたいのに、周りが気になって目を閉じていることもできなくて。
それなのに、ここがフードコートという公衆の面前だということを忘れてしまいそう。いっそ忘れてしまいたい。
ゆっくりと、温もりが離れていく。
チョコレートの余韻を追いかける私の視線と、彼の視線が交わった。
フードコートの彼方から、女子高生たちの大きな笑い声が耳に飛び込んでくる。食事時を外しているから、フードコートにはお客さんの姿が少ないのが幸い。
皆自分たちの世界にすっかり入り込んでいて、私たちなど気にする様子もない。もちろん気づいた様子もない。
だけど、私たちだって同じ。
「ごちそうさま」
きゅっと口角を上げて、彼が微笑む。
私の大好きな顔をして。
ー 完 ー
