好き、だから抱きしめて

マンションの前まで来ると玄関の入口に綺麗な女性が立っていた。その女性は私達を見つけると何も言わず繋がれていた手に視線を移す。



その時、藤宮の手が私から離れた。たったそれだけの動作で彼女が何者なのか察しがついた。



『美海。先に部屋行ってて』



「…分かった」



私はそう言うしかなかった。



部屋に着き重い袋をテーブルに置くとその場に
座り込んでしまう。



さっきの人を思い出してみる。すごく綺麗な人だった。きっと業界の人で藤宮がここに来る原因を作った人物だろう。



自分と藤宮は何の関係も無いのだから落ち込む理由もないはず。



それなのにこのモヤモヤはなに?
手を繋いできた藤宮の本心はどこにあるの?



答えの出ない問答を1人で悶々と考える。しかしその日、いつまで経っても藤宮は帰らなかった。いつまでもこの生活が続くはずないと
分かっていたのに…。



意思とは無関係に流れ落ちる涙を拭いながらいつしか眠りについていた。

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