弟系男子が『弟』をやめた時。
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「お、眞樹ちゃん。」
職員室の扉を開けると、
高岡ちゃんがコーヒーを淹れている最中だった。
俺に気づいて、フッと笑って
近づいてくる。
「どしたん、1人で。
永澤つきあってくれなかったのか?」
「うっさい。
1人で来る方が手間取らないし、
楽だったんだよ。」
「あっそ。」
淹れたてのコーヒーを啜って
高岡ちゃんはプリントの束を
ペラペラとめくっていた。
俺の苦手なブラックのコーヒー。
よくこんなもん飲めんな、なんて
少し顔をしかめる。
「ん。上出来。ありがとな。」
確認が済んだのか、高岡ちゃんは
束を自分のデスクに無造作に放った。
「どーも。
じゃあ、そろそろ帰るわ。」
夏といっても、もう少し薄暗い。
永澤はもう帰ったかな、なんて
ぼんやり考えていると。
「…何かいいことあった?」
怪訝そうに高岡ちゃんにそう言われた。