キスの味
「美嘉、」

抱きすくめられている所為かやけに近くでもう一度名前を呼ぶのが聞こえる。

「ただいま、美嘉」

「亮介…?」

確認した私に、肯定の 意を示すように抱きしめられている力が強くなって、涙が一筋零れ落ちた。

「亮介…っりょう、りょうぅー」

みっともなく涙を零しながら名前を呼び続ける私に、亮介はやさしく背を撫でてくれた。

「美嘉、会いたかった。ずっとずっと、美嘉のこと考えてた」

もう何が何だか分からなくて、どうして亮介がここにいるのかとか、どうでもよくなって。

「…た」

「ん?」

「私もずっとずっと、亮介のこと考えてた、すき、だから、ずっとずっと、好きだった」

あの時に伝えられなかった言葉を、涙でぐしゃぐしゃになりながら、しゃくりあげながら。

そんな私に、亮介は優しく微笑んで、

「…っ」

「あの時も、泣いてたよね」
優しく触れ合った唇。触れ合ったまま、亮介は囁く。

「好きだよ、」

その言葉に更に涙を溢れさせた私に、亮介は少し困った風に微笑んで、泣かないで、と言って涙を拭ってくれた。

「笑って?俺は、美嘉が笑ってるのが一番だと思うから」

ぐいぐいと袖で涙を拭って、そんな擦ったら赤くなるよ?という亮介の言葉も聞き流して、涙を止める。

「ほら、やっぱり赤くなってる…」

目の下を軽く撫でられて、どちらからともなく笑みが零れた。

ゆっくりと亮介が近付いて、ゆっくりと瞼を下した。
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