嫉妬する唇
この情けない姿の自分を見たら、全ての事がどうでもよく思えてくる。
その時、屈みこむあたしの背中に風がスッーとあたった。
滞っていた空気が一気に流れる。
「覗き趣味あったの?」
クスッと笑うよく知った声が降ってきた。
いつものあたしなら、「そんなわけないじゃない!」なんて睨みのひとつもくれてやるけど、今のあたしに、そんな余裕なんてなくて、振り返ることすらできない。
ただ流れる沈黙の時間。
どうにかしなくちゃと思うけど、あたしから沈黙を作っておいて、今更どうしたらいいのか考えても
そんなボキャブラリーも知恵もあたしには無い。
あぁ。もうグチャグチャだ。
「もしかして、俺とは話もしたくないってこと?」
無言のあたしに痺れを切らしたのか、アイツは少し苛立った声を出した。
口も聞きたくないんじゃなくて、突然やってきた恋心に戸惑ってるんです。なんて、そんなことアイツに分かるはずもない。
「違うよ」って軽く笑ってペロッて舌でも出しておけば、この空気は元通りに戻るはずなんだけど、今のあたしには、それすらできない程心臓バクバクいってる。
下手に声なんて出したら裏返ってしまいそうだ。
アイツの声が、あたしに熱を与えていく。
早くこの場から逃げたい。