御主人様のお申し付け通りに
「うっとしいなぁ…」

「あぁ?なんだって?」

更に永田は、キツイ目をして睨み付ける。

「あんた、わざとやってるでしょ」

「わざとだけど、何か文句あるのか?」

ひ、開き直るか!?

「本気で嫌な性格!」

「おまえがな」

しかもすぐ言い返してくるから、私もすぐに言い返す。

「あんたがだっての!」

「おまえがだよ」

「あんたのが酷すぎるわ!」

「いやいや、おまえのがクレイジー?」

バカって普通に言えよ、バカ!

もう、いいや。

面倒臭いから、部屋戻ろっと。

「元旦那だろ、今の」

「それが何か?」

私は無視して、アパートの中へと入ろうとした。

「会いたいって?会うのか?」

まだ、発するか。

「会う気でいる」

「じゃあ、俺のキスは意味無かった訳だ」

「そ、そんな事は…」

無いとか言っても、会おうと思ってるから、その先の言葉は言えなかった。

「あんまなぁ、人の事をなめた扱いしてると、一気に痛い所へ落ちるぞ」

…ズキッ…

永田、私はそんなつもりは無かったんだよ。

でも、今の言葉で胸が痛くなった。

「勝手にしろ」

そう言って、あっさり永田は自宅へと帰って行った。

ムカつくんだけど、図星だから胸が痛むのかな。

なめた扱いって。

誰に対してなの?

元旦那に?

それとも永田に?

その後、メールで連絡を取り合って、元旦那と今夜会うことになった。

1時間後に、車で迎えに来る。

私は永田に知られないように、こっそり家から出て、路駐する車の中に入り込む。

「お疲れ」

まだ、スーツのままの元旦那。

ネクタイをはずしながら、

「お待たせ、どこ食事に行く?」

「どこでもいいよ」

「よし、じゃあ食べ放題行こうか」

その言葉に思わず、

「やったー!」

永田とのキスの約束を忘れて、はしゃいでしまった。
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