クレナイの歌
「…名前?」

「名前」

「苗字でしょ、それ」

朱里が首を傾げる。

「そうだよ。何、名前教えたら呼んでくれるの?」

「……別に」

「だから教えない」

「……」

彼女の反応が妙に面白くて、岸辺はこの沈黙を楽しんだ。


本当に、この男は変だ。


眉間のシワを一層に深め、彼女はため息をついた。

「変な人」

そう一言言い残し、彼女は前を向いた。
再び訪れる沈黙。

日の沈みが早く、二人の影は伸びていく。冷風が優しく吹き始めた。

木々の隙間から差し込む夕焼けが、辺りに咲き誇る花の赤みをより一層ひき立てる。

「彼岸花……ここ、たくさん咲いてるけど、危なくない?」


「この花好きなの」

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