クレナイの歌
「私、私に話しかけてくれて……ありがとう」
「うん」
「本当は、嬉しかったんだ……岸辺がこの丘に来てくれたこと」
この木下で出会い。
歌声を聞いてくれた。
誰にも届かぬ儚い歌声を。
初めは変わった転校生だと思っていた。
それだけだった。
曖昧だった互いの関係がやっとはっきりと不思議な関係になったのだ。
それは嬉しいことのはずなのに。
朱里は肩を震わせている。
その震える肩に手を当て、軽く押し返す。
「……朱里」
朱里の涙を袖で優しく拭い、涙とは一転真剣な顔になった。