クレナイの歌

もう行かなきゃと言って、岸辺は彼女の手をぎゅっと握った。

「三年後、ここで暮れない時に歌っててほしい。その歌を……。もう行かなきゃ」

「三年後って。私、もう待ったりしな……っ」

「卒業した頃に会いに来るから。っそれまで、頼む」


徐々に離れて行く二人の手。
指先が惜しみさを訴えていた。


「あんた私にまた待てって言うの?!」

「…三年後だけじゃないから。それまでにも会おうよ。それならいい?」

「うっ……。なら……電話もメールも必ずしなさいっ……」


涙が流れそうだ。

意地のせいで自然と命令口調になってしまう。


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