クレナイの歌
***
チャイムがなり、日がまた暮れる。
暮れない時。
少年は、皆が下校して数分後、いつもよりも早く教室を出た。
マフラーをきっちりと首にまき、ゆっくりと歩く。
いつもと変わらない。
だが今日の彼はいつもと違っていた。
ぐるりと方向転換をする。
自分でも何故こんなことをしているのかはわからなかった。
彼の向かう先は、小さな丘だ。
毎日朱里を見かける場所だった。
彼女は多分、今日もここにいるだろう。
会って何を話すのか、挨拶でもするつもりなのか。
自分でもわからない。
とにかく歩み寄った。
進んだ公園を曲がり、少し進んだ頃。
小さな声が、風にのって少年の耳に届いた。
「歌……?」