クレナイの歌
小さな声は、進むにつれてだんだんと大きくなっていく。
決して大きな声ではなかったが、心をすっと透き通る。
まるで上手くすり抜けて一向に掴めない“望んだ幸せ”…そんな声だった。
「優しげな、声だ……」
瞳を閉じて、その歌声だけに耳を傾ける。
でもやっぱりどこか悲しい。
胸がじんわりと温かくなった。
公園の裏に入り、茂みをかき分ける。
見えたのは紅に囲まれた丘だった。
一本の大きな木があって、その隣に少女の後ろ姿が見えた。
足を踏み入れ、がさりと草の音が静かに響く。
同時に彼女は振り返った。
そして目が合う。一瞬じゃない。
訪れる沈黙とともに、二人の視線は離れなかった…。