モン・トレゾール
「君は優しいから、とても繊細で傷つきやすいんだよ」
……誰?
後ろから私を抱き締めるこの腕は、誰のものなの?
「……私が、優しい?」
「そうだよ。君は優しいから、自分で自分を許すことが出来ないんだ」
「……なにそれ? 私が自分を許せない? そんな……分かった風なこと言わないでよ」
付き合う男みんなに裏切られてきた私が――優しい?
そんなわけないじゃない。最後には裏切られるって分かってるのに、どうして私が優しくしなきゃいけないのよ。
私の男運の悪さは"初めて"の相手から始まる。
初めて付き合った人と、初めて寝た男(ひと)は違う。
私の初めては、中学の時にピアノを教えてくれていた先生にくっついてきた大学生だった。
初めての彼氏がどうのとか話す周りの女の子達よりも先に、男の人に抱かれるっていうのがどういうものなのか、ただそれを試してみたかっただけだった。
思春期を迎えた子供の好奇心。
……そう、ただそれだけだったのに。
本気になったのは彼の方だった。
付き合ってるわけでもないのに、どんどんと束縛が激しくなって……重くなって、苦しくなって。
そして私は――彼をそんな風にさせてしまった自分が許せなくなった。