モン・トレゾール

「――またそうやって自分を責めるだろ」


「……違う。彼を苦しめたのは私。だから、あんなことした私が悪いの」


キラキラと粒子がキレイな小窓から覗く砂浜が自分の涙で滲んで見える。


外の世界はあんなに美しいのに、私の心の中はドロドロと真っ黒で汚い。


残酷な二度と目覚めない夢のようなこの世界で、私は誰に自分を理解して貰おうと思ってるの?




「……ママ」


突然目の前に現れた真っ白なワンピースを着た女の子。


裏地のレースを風になびかせて私の足にまとわりつくこの子は、兄に甘えたあの日の私?


「ママ、やっとママとおはなしできるね」


無邪気な笑顔を向けると、その小さな腕を広げて私の両膝めがけてとびついてくる。


――違う、これは私じゃない。


「あなた……誰?」


私、こんな子……知らない。


「ママ?」


ヤダ、そんな呼び方しないで。


私の中の”ママ”は私のママだけ。


こんな子なんて知らないんだから。


「ママ、あたしはママとずっといっしょに」


「……違う! あなたなんか知らないし、私はあなたのママなんかじゃない! 消えて……今すぐ私の前から消えてよ!」
< 112 / 147 >

この作品をシェア

pagetop