モン・トレゾール

お風呂上がりの寝室。


シンデレラのお話に出てきそうなお姫様仕様のドレッサーは、結婚祝いに叔母さんからプレゼントされたもののひとつ。


この部屋の温かみのある照明は彼が選んだ。


その光を吸い取るように真ん中からキレイに二つに割れる小さな箱の中には、ハリーウインストンのリングが輝いている。


角度に応じて違った輝きに見えるこのリングは、プロポーズされた日に彼から貰った。


会社ではつけれないからと言う私に、彼はチェーンに通してくれたんだけど。


落としたらどうしようとか、失くしたらショックで立ち直れないとかそんなことを考えてるうちになんだかタイミングを逃しちゃって……特別な時以外は、ずっとこの箱にしまったままにしちゃってる。


エンゲージリングとマリッジリング、彼から貰った指輪はこれで二個目。


大切なものほど、それを失った時の絶望感は計り知れない。


『君は優しいから、とても繊細で傷つきやすいんだよ』


夢の中で、顔も見えない誰かに言われたことが不意に頭に浮かんだ。


私、どこかで自分を美化してるのかも。


ううん。もしかしたら、そんな風に言われて欲しいって思っている自分がいてそれが夢の中に出てきてしまったのかもしれない。


けど、現実の私はそんないい人なんかじゃない。


……あの人は、私の本当のズルさを分かっていないんだ。


だって、本当に優しい人間なら、自分のことより先に相手のことを考えるもの。

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