モン・トレゾール
彼が眠るベッドの前。
背中を向けて眠るその姿に少し戸惑ってしまう。
今日のことはちゃんと謝ったし、それから喧嘩した覚えなんてないけど。
ベッドの周りにも明かりがついてたから、てっきりまだ起きてるもんだと思ってたのに。
私また何か怒らせるようなことしちゃったの?
さっきの彼の声とあの表情に、全く期待してなかったと言えば嘘になる。
自分でも分かる――今夜の私はいつもと違うって。
なんとなくで関係を持ってしまった初めての人。
寂しさを埋める為だけに付き合った初めての彼氏。
優しいから傷つきやすいだんて違う、私は今まで自分の為だけに人を利用して生きてた。
現に今だって、自分はこの人に愛されてるんだって試そうとしてる。
「……」
彼の頬に触れようとして伸ばした手が、そこに辿り着く前に止まってしまう。
こんな中途半端な自分を受け入れてくれたこの人の瞳に、今の私はどう映っているんだろう。
結婚しても子供を欲しがらないのも、私がこんなだからなのかもしれない。