モン・トレゾール

―――


ヒリヒリと痛む腕。


痕が残るくらいにぎゅっと締めつけられた手首を捻(ひね)らせたのは、力では敵わない私からのせめてもの抵抗だった。


「……やっ」

生温かい舌の感触にピクリと身体が反応してしまって。


鳩尾(みぞおち)の中心をぺロっと舐められると、意地っ張りな私は強く唇を噛んでいた。


それに反して親指で割られるように開いた唇に与えられたキスは、私のとは違う――深く濃厚なモノ。


下から伸びるように触れた彼の指は、いつになく強引だった。


「……ぁんッ――」


彼の舌が角度を変える度に、抑えていたはずの声が零れてしまう。


全部を食べつくされるように深くなるキスに、息苦しさを覚えると自然と涙が溢れる。


押さえられていた腕から力が抜けると、私を開放するように彼は手を離した。


私と同じように、荒い息を整えながら肩で呼吸する彼の顔が胸元へと下がる。


火照る頬を伝った涙の痕が、今は少し冷たかった。


抱いて欲しい、そう望んだのは私。


自分でも分かってる、今日の自分は普通じゃないって。


――だって、キスだけでこんなに濡れたのは久しぶりだったから。
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