モン・トレゾール
「……どうしよう」
さっきまで彼が横になっていたソファーで擦り剥いた膝に絆創膏を貼り終えた私は、自分がとるべき次の行動に悩んでいた。
彼は言い出したら聞かないところがあるから、とりあえず眠るまでは側に居ようと思ったけど。
私の添い寝の経験と言えば、子供の頃にママにして貰ったくらいだし。
実際それと同じことを大人相手に自分がしてあげるって考えたら、どうすればいいんだろう。
ママがしてくれた時みたいに、腕枕して胸の方に引き寄せて片方の手で頭とか背中をよしよしするの?
「……」
よしよし? あんな姿の彼に私がベッドの中で?
それって、なんか……イヤらしくない?
そんなどっかのお店でしてるようなことを……私がするの?
「……こ、断ろう」
そうよ、大(だい)の大人が添い寝しないと眠れないなんてそんな子供じゃあるまいし。
そう心に誓って寝室に戻ったものの、いざとなると勢いが出ない。
こんなところで迷っててもしょうがないんだから。言うのよ、愛莉!
そう自分に喝を入れる私の中には、さっき自分が口にした”冗談”という言葉が存在しないのかもしれない。
「――や、やっぱり一人で寝て」
リビ ングと寝室を繋ぐドアノブに手をかけると、期待しているようにこっちを見る彼と目が合いそうになって。
「……そんな目で見ても、無理なものは無理なの」
その視線に気づいた私は思いっきり彼から目を逸らすと、そのままくるっと背中を向けてしまっていた。

