モン・トレゾール

「ドジ」


ぶつけた膝に気を取られながらも梅干しを拾う私の背中から、笑いを含んだドジがとんでくる。


「……う、うるさいわね。そもそも理が急に変なことするからこうなったんじゃない!」


「だからって、どうすればそんなところぶつけんだよ」


「どうすればって……私だって分かんないわよ」


……うう、痛い。膝のとこ、少しだけ擦り剥いちゃった。


私ったら、どうしていつもこうなんだろう。


一生懸命になればなるだけ空回りして、いざという時にはこういうドジばっかり踏んじゃう。


「愛莉」


リビングに散らかしたままの薬箱。


そこに絆創膏を取りに行こうとした私の腕をがっちりと彼が掴む。


「……なによ」


面白半分でした意地悪もこうして失敗に終わるとなんだか悔しくて、こんな風に冷たく返してしまうのが私の負けず嫌いなところ。


「添い寝して」


「……そ、添い寝?」


「うん、添い寝」


「……それ、冗談よね?」


突然の彼のリクエストに、つい顔が引き攣(つ)ってしまう。


昨夜中途半端にされたせいでこっちはすっかり寝不足で、朝になったらごめんとでも謝るのかと思えば全然覚えてないみたいだし。


それでも我慢してた ら髪の毛濡らしたままソファーの上で倒れてるしで、こっちは昨夜からこの人に振り回されっぱなしなのに。


今度は添い寝して欲しいって――こ、こんな無防備な姿の彼の横で一緒に寝ろだなんて……なんかの嫌がらせなの?
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