モン・トレゾール
「理、聞いてる?」
「うん、聞いてる」
……嘘ばっかり、さっきから空返事ばっかりじゃない。
「だからね、私は――」
「愛莉、少し一人になりたい」
遮るようにそう言われると、思わず眉間にシワが寄ってしまう。
「……どうしたの?あっちでなにかあった?」
「別に」
「……そ、そう?」
たった3文字の言葉を返されると、これ以上気の利いたことが何も言えなくなってしまった。
……もしかして、私が少しうるさすぎた?
そうよね?飛行機で移動するだけでも、結構疲れちゃうんだもん。
こんな愚痴みたいなこと帰ってきてまで聞きたくないわよね。
それに、今日は電話に出なかったことでも怒らせちゃったわけだし。
――明日からは、会社でも家でもこんな失敗しないんだから!
そんな風に少しばかり反省すると、先に寝るとだけ彼に告げ私はトボトボと寝室へと向かった。