モン・トレゾール
それから、『言った』『言ってない』その繰り返しが始まって……
結局、彼にどうしてあんな服を着せたがるのか問い詰めていみた。
だけど、返ってきた言葉が『戸田がオマエに手を出すから』とかで、これは今私が置かれている状態では現実的に100%考えられないものだった。
どうにかあの男の本性を分かって貰いたくて、それからずっと昨日と同じことを説明し続けた結果。
『じゃあ、今日の様子をみて決める』とかなんとかって、また勝手なことを言い出した。
――それで、今現在に至る。
時計の針は8時20分をさそうとしているけど、戸田さんはまだ来ていない。
今日の服は、お花柄の刺繍が入ったベージュのアンサンブルのニットに黒でAラインの膝丈のスカートだもん。絶対ダサくないはず。
仕事だとあまり勝てる気がしないけど、見た目は昨日までの私じゃないんだから。
……あ、お花
応接室も兼ねている社長室には、大きな花瓶にびっしりとキレイな花が飾られていて、その水を替えるのが私の毎朝の日課になっている。
こういうところは、男の人が気づかないとこだもん。
「目立つとこだけが仕事じゃないんだから」