モン・トレゾール
――や、やってしまった
私ったら、朝からバカにされる原因を自分から作ってしまったのよね?
「布巾(ふきん)あるか?」
「……えっと、あるけど」
「ここ、水が零(こぼ)れてる」
「ウソっ!?」
慌てる私に、戸田さんは置いた花瓶を再び持ち上げその状態を確認させる。
結構重かったから、持ち上げた時にでも傾いて気づかないうちに零れてたのね。
布巾の代わりに自分のデスクにあったタオルを渡すと、床に零れ落ちないように上手くそれに吸い取らせていく。
その完璧な様子を見て、私はというと……
怒られた子供のように成す術もなくただ黙って立ち尽くしてた。
あー、もう! 出だしから全然ダメダメじゃない。
……せっかく誰よりも先に出社したのに。