モン・トレゾール
最近の彼は以前のように自分の瞳の色を隠す為のコンタクトをしない。だから、昔の――出会った頃のままの彼だ。
フワフワに軽くウェーブした髪は、いつ触っても柔らかくて。意地悪な感じで微笑む姿は、本当に昔の彼のまま。
「皆川は、イメチェンして早速彼氏でも出来たのか」
私と戸田さんの横をそれ見ろという表情で横切る男。この人こそがこの会社の社長で私の旦那――大河内 理(おおこうち おさむ)だ。
「か、か、彼氏って!?」
「戸田と付き合ってるように見えるけど」
長身でスマートにコートを脱ぐ姿は既に私と結婚しているとは言え、戸田さんなんかよりも数段カッコイイ。
……じゃなくて。この戸田さんにも負けないくらいの嫌味ったらしいような言い方は、確実に何かを誤解してる。
「……おさ、じゃなかった。社長、これは誤解です」
「ええ。さっきから付き合おうかって話になってます」
「そう、付き合おうかって……えー!?」
この男、いきなり何てこと言い出すのよ!!