モン・トレゾール
大きな回転式のドア。
その向こうに黒塗りのリムジンが一台止まっている。
……げっ! 迎えなんていいって今朝も言ったのに。
私の姿に気づくと、運転手は素早く車から降り軽く頭を下げ、後部座席のドアを開けようとする。
「じ、じゃあ、ここで。お疲れ様でした!」
戸田さんに気づかれないように大回りしてからそこに向かおうと考えた私は、ニコッと笑って歩き出した。
「おい、ちょっと待て」
そうはさせないと言わんとばかりに、反対に今度は戸田さんが私の右腕を掴んだ。
「な、なに?」
「この後、ちょっと付き合えよ」
横暴な態度で出た戸田さんに、見る見るうちに自分の作った笑顔が崩れていく。
「私、今日は急いでるの」
こんなとこ、理に見られでもしたら……確実に血の雨が降る。
「うるせぇな。ごちゃごちゃ言ってねぇで、処女は黙ってオレに任せておけばいいんだよ」