モン・トレゾール

「しょ、しょしょしょ……」


突拍子もないような発言に、一気に真っ赤になってしまう私。


この人、いきなり何言い出すの!?


「なんだよ。言わなくても分かるし、今更隠す必要もねぇだろ」


それでも戸田さんは、まるで常識だろとでも言ってるかのように至って真面目な表情だ。


……何が『分かってる』なのよ。


いつもは受付嬢が座っている丸いカウンター。夜の6時を過ぎると、もうほとんどの社員は残っていなかった。


そのフロアのど真ん中で私は……恥ずかしさと情けなさでその場所から全く動けなくなった。


まだ20代と言えど、もうすぐ30歳目前だっていうのに。


それに、もう立派な人妻だっていうのに……


私、今……年下の男に、しょ……処女だって言われたの?


「いいから行くぞ」


放心状態の私の様子もお構いなしに、戸田さんは自分のペースを崩さなかった。
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