モン・トレゾール

「おまえさぁ、最近変わったことあった?」


ヴォーと低いエンジンの音が交差点に響く。


信号が赤に変わると、さっきまでの雰囲気とは違った彼の声に導かれるようにその顔を見る。


「……変わったことって?」


「いや、ないなら別にいいんだ。明日からおまえに対する戸田の態度、どうなるかな」


一瞬、彼の様子が変だと思ったけど、気のせいだったのかなぁ?


パッと信号の色が変わり走り出した時には、もういつもの彼に戻っていた。


けど、急に真顔になって何を言い出すかと思ったら……


「気づいてたの? 戸田さんが私に……あんな態度しかしないって」


「同じ部屋に居るんだ、当たり前だろ」


だったら少しくらい助けてくれてもいいじゃない。


「結婚のこと隠そうとした、お仕置き」


「はぁ!?」


彼の思わぬ発言に、思わず胸元のシートベルトをギュッと握ると彼に抗議する体勢を取ってしまう。


――”お仕置き”って


……まさか、あの服も、だったりしないわよね?
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