モン・トレゾール
肩と耳の間に電話を挟むと、ビンテージ物のワインのコルクを抜いた。
「沙羅は? 側に居るのか?」
別に聞かれ困るようなことは話すつもりはないが、俺達がこんな会話をしてること知ったら気分は良くないだろう。
『いや、今は俺が外に出てる』
……そうか。やっぱり、こいつもあまり聞かせたくないんだろうな。
沙羅は俺の従妹(いとこ)にあたる。
大学時代にバイト先で偶然知り合ったとかで、知らない間に付き合い始めて。
この俺より先に結婚しやがった。
『……帰ってくるんだろ? 義兄(にい)さん』
浩の言葉に小さく溜め息が出る。
――やっぱり、この話だったか
「そうみたいだな」
『”みたい”だなって……おまえ、大丈夫なのか?』
「なにが?」
『……なにがって。それは、おまえが一番分かってるだろ?』
俺が本心を言おうとしないからか、浩の声は段々荒々しくなってきていた。