モン・トレゾール
「……理、あの出張から戻ってきてからなんか変だよ」
たじろぐ様子でそっと俺の肩に腕を回すと、彼女は耳元でそう囁くように尋ねた。
大きく巻かれた髪が俺の首にかかると、少し擽(くすぐ)ったい。
「――愛莉、俺のこと好き?」
ふと、さっき浩から言われたことを思い出す。
自分で言ってて、恰好悪いってことは分かってる。
こんな風に女々しく聞くのは、もう何度目なんだろう。
それでも、俺はこの言葉を聞かずにはいられない。
「……もう、言いたくない」
何度も同じことを訊ねる俺に呆れたのだろうか。
小さくそう答えた彼女を抱き締める腕に力が入る。
「だって、さっきの理……凄く、意地悪だったから」
顔を真っ赤にしながら弱々しくそう呟いた彼女の様子にホッと肩をなでおろす。
それだけで、重みを増した心がグッと軽くなるのを感じた。