モン・トレゾール

「へぇ、せっかくいい話教えてやろうと思ったのに。そんな態度でいいわけ?」


くるりと体の向きを変えた戸田さんは、文句も言わずに手際よくコーヒーの使用済みのフィルターを片づけ始めた。


私の言う通りに動くその姿に少し不気味さを感じてしまう。


……どうせまた私を騙そうとしてるんだわ。


二、三日前も私は戸田さんのとんでもない嘘にころっと騙されてしまっていた。


私が理と結婚してるって伝えてから態度が変わったような気がしたから、やっぱりショックだったのかなぁとか色々考えたりしたんだけど。


それは何日間かだけで、彼が見てないタイミングで私をからかったり貶(けな)したりで、完全に自分の読みが甘かったって反省したのよね。


だけど、この人――前よりもずっと笑うようになった気がする。


それだけ、私を小馬鹿にしてるってことなんだろうけど。


「もう騙されないわよ、そんなの耳を貸すだけムダなんだから」


「本当にいいんだ? アンタの旦那に関する話なんだけどな」
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