モン・トレゾール

満足気に出来たてのコーヒーをカップに注ぐ戸田さんの背中をジロリと睨んだ。


この人が知ってる彼に関することって何なんだろう。


なんの話かだけでも聞いてみたいのに、また騙されたらと思うと素直にそれを口にすることが出来ない。


「――今夜付き合えよ」


向きを変えマグカップに口をつけた、戸田さんの顔を凝視する。


不敵な笑みを浮かべたその表情からは、真実かどうかは汲み取れない。


「今夜って……そんなのムリに決まってるでしょ」


結婚しているとは告げていなかったこの前の状況とは違う。


そんな簡単に”はい、そうですか”なんてついていけるはずもない。


「じゃあ、言えないな」


残念、と続けた戸田さんの言葉が耳に残る。


「お、お昼! ……とかじゃダメなの?」


夜がダメなら、お昼休みはだなんて――


私ったら、そこまでして嘘か本当かも分からないような不確かな情報を知りたいの?


なんだか、戸田さんの話術にのせられるかのように冷静さを失ってる気がする。
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