銀盤の国のお姫様
 涙がだいぶ引いて、周りの景色がはっきり見えたその時、

「長谷川小まりさんの得点・・・」

 いつの間にか、最終滑走の小まりまで終わっていたんだ。

「74.50点。」

 大喜びしてコーチである両親に飛びつく小まりとは対照的に、私は唖然としている。

 華音有のあの演技に、わずか0.08点上回るとは・・・正直信じられない。

 後で二人の演技の映像と、採点表を見たところ、小まりはスピン、ステップがすべて最高難度のレベル4であったのに対し、華音有は、スピンが一つだけレベル2と低く抑えれていた。
 レベル2だったスピンは、レイバックスピン。レベル2の時の基礎点は1.9点だ。ミスをしてなければレベル4が取れるはずだった。

 映像で確認すると、よく見るとヘアカッターが八回転回っていなかった。

 単一の姿勢で八回転以上回るとレベルが上がる。
 さらに、ショートプログラムではレイバックスピン(種類はレイバックスピンに入るものなら何でも)で八回転以上回ってからのビールマンでないと、レベルが上がらない。よって、レベル2となった。
 

 あと、それぞれの要素のGOEの合計と芸術点が華音有より小まりのほうが点数が高かった。

 そういうわけで僅かな点差で、一位長谷川小まり、二位姫路華音有となった。


 
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