彼の手
何だか意味深に聞こえてしまった。


車はしばらく走った後、公園の駐車場に停車した。

木崎さんは美容室の裏話を幾つかしてくれて、あたしを笑わせてくれた。

さすが接客をしている人だけある。



「どう? 少しは気分転換になってるかな?」

「十分です。久しぶりにたくさん笑いました」

「そう」

「失恋してから、会社では空元気で振る舞って、夜になると落ち込んで泣いての繰り返しで、全然笑えてませんでした」

「じゃあオレが誘ったのも無駄じゃなかったな」


木崎さんが満面の笑みを浮かべた。


まだ完全に失恋の傷が癒えたわけではないけど。

少しだけ心が軽くなったのは事実。


「──詩織ちゃん」

「はい?」

「これからも時々こうやって会ってもらえないかな?」

「……」


それはどいうつもりで言っているの?






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