キスにスパイスを、キスをスパイスに
部屋の中に入り、しばらくはテレビを見ながらごろごろとのんびりと過ごした。無言のこの空気も、洋輔さんとなら心地いいくらいで、とてもリラックスできる。


「……風呂入るか?」


洋輔さんの言葉に時計を確認すると21時少し前。そっか、もうそんな時間か……。さっきは2人とも少し浸かる程度だったからもう一度入ろうと言っていた。今度は、一緒にはいりたいな。折角の温泉旅行なんだし。


「うん……い…入ろう」


“一緒に”って私から言おうって決めていたのに、いざ言葉にしようとすると、躊躇してしまう。はっきりと……言えなかった。どうして素直に言葉に出来ないんだろう。自分が情けなく感じた。


「あー、今度こそ一緒にな」

「……え?」

「今、そう言おうとしたんだろ?」


私は一緒にと言えなかったのに、言いかけて飲み込んだ言葉をちゃんと理解してくれていたらしい。……すごく嬉しい。こんな風に私の気持ちをちゃんと汲み取ってくれる彼のことがやっぱり好きだ。改めて実感した。


「うん、一緒に入ろう」


彼に背中を押され、今度こそちゃんと自分の言葉で伝える。大きく頷きながら、返事をした。嬉しさを隠す事は出来なくて、自分でも表情が緩んでいるのが分かった。彼になら、どんな表情だって見て欲しい。
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